新型コロナウイルス感染症の発生からまだ1年も経過していませんが、ウイルスの変異や毒性によって流行は何回も繰り返され、感染拡大が制御できない地域ほど社会経済活動に甚大な影響が出ることが鮮明になってきました。今年の日本のGDPの見通し改定値が下方修正されたことも記憶に新しいのではないでしょうか。

働き方も仕事の内容や成果によって処遇が決まるジョブ型勤務を採用する企業が目立つようになりました。コロナ禍で、日本型の安定した雇用形態や手堅い内部留保といった日本の企業が従来守ってきた文化が世界で経営のお手本になりつつありますが、日本国内では今までの企業文化を一掃しないと世界と戦えない、コロナ禍でゾンビ企業といわれる中小企業は早く整理されるべきだという意見も出るようになりました。

文明社会で生物としてのヒトが人間として生きていく上で、自立に耐えうるスキルを持ち仕事をする場があり、それによって社会に参画し、収入を得て家族を養うというのは安定した社会を作る上で大切な仕組みです。各国の政府や中央銀行が政策を決める時に必ず失業率や雇用情勢を分析するのはそのためですが、そのような原理を無視して国の成長率が確保できないから働き方も企業も規格に合わないものは壊してしまえという議論は、構造改革とは少し趣を異にする性急すぎる議論かもしれません。
アダム=スミスのいう「神の見えざる手」とは単に市場原理の均衡だけを指す言葉ではなく、時代や社会の有り様に即した社会制度を実現する人間の行動力を希求した言葉でもあったはずです。

コロナ禍で患者さんの健康被害も深刻になっています。
特に増加しているのは、運動不足による肥満、体重増加と筋肉量の低下です。
デスクワークやリモートワークが増え、通勤が混雑を避ける自家用車の利用にシフトしたことが大きいようです。
加えて成果主義を旨とするジョブ型勤務の弊害で、在宅勤務での仕事の管理がうまくいかない人ほど肥満や筋力低下といった問題が深刻になっているようです。
体重が増えれば、身体が重くなった分だけ血圧は上昇し、心臓や腎臓に負担がかかります。食事の時間が乱れれば睡眠のサイクルも狂い、アルコールを使って就眠しようとして肝臓を傷め、アルコール依存症になりかけている患者さんも見受けられます。

以前この稿でも触れましたが、これらの健康被害を防ぐにはとにかく体重管理です。
体重管理の要点は時間の管理(時間割)と運動習慣の定着です。
睡眠は身体のメンテナンス時間なので重要です。よい睡眠を取るためには起床時間を一定にして体内時計を狂わせないようにすることです。夜更かしをしても翌朝は必ず決まった時間に起きる、どうしても眠くなったら座ったままの30分以内の昼寝で脳内を一度休ませてリセットします。

長雨と猛暑で運動が十分にできない状態が続きましたが、部屋の中でも体操や筋肉トレーニング、ストレッチをして定期的に筋肉に刺激を与えてあげることは大変重要です。
筋肉が衰えてしまうのは体内のエネルギーを有効に活用するための重要な臓器を失うことと同じです。その結果少しでも過食してしまうと身体を動かすエネルギーとして活用されずに脂肪に変わって体重増加に繋がります。
特に代謝機能が衰え始める30歳以降の身体にとっては筋肉量の低下は深刻な問題です。
1日20分以上をできれば2回、肩や股関節など大きな関節の周りの筋肉を意識して動かしましょう。まとまった時間が取れないときは、隙間時間に5分でも10分でも体操やストレッチをしてください。NHKのラジオ体操は1回5分です。ラジオ体操の優れた点は全身の筋肉を一通り使える仕組みになっているところです。
何もしないより5分でも意識的に筋肉を動かしてあげる方がよほど良いです。

仕事とプライベートの仕分けが難しくなって健康を害する例が増えています。
コロナ禍ではっきりしたのは個人の自己管理能力が容赦なく試されるという過酷な現実です。今まで以上に「自分の時間割」の持つ意味の重要性が問われています。
自律と自立、これからずっと付き合っていく問題であれば、この際習慣化して自分の実力にしてしまうしかありません。